不動産の売却で取得費が不明な場合
2023/4/27
2023/04/27
概算取得費について
不動産を譲渡した場合の譲渡所得の計算については収入金額から不動産の取得費、譲渡費用、特別控除額を控除して計算します。取得費は土地の場合、購入代金や購入手数料の合計額です。建物の場合、購入代金、建築代金、購入手数料、設備費から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額になります。
しかし先祖代々相続で引き継いできた不動産や、取得時期が古い時期などで不動産売買契約書、建築請負契約書を紛失して、取得費が不明な場合があります。
この場合売却時の収入金額の5%を取得費とすることが認められています。
【租税特別措置法第31条の4第1項】
個人が昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地等又は建物等を譲渡した場合における長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、所得税法第38条及び第61条の規定にかかわらず、当該収入金額の100分の5に相当する金額とする。ただし、当該金額がそれぞれ次の各号に掲げる金額に満たないことが証明された場合には、当該各号に掲げる金額とする。
一 その土地等の取得に要した金額と改良費の額との合計額
二 その建物等の取得に要した金額と設備費及び改良費の額との合計額につき所得税法第38条第2項の規定を適用した場合に同項の規定により取得費とされる金額
【租税特別措置法通達】
措置法第31条の4第1項の規定は、昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地建物等の譲渡所得の金額の計算につき適用されるのであるが、昭和28年1月1日以後に取得した土地建物の取得費についても、同項の規定に準じて計算して差し支えないものとする。
取得費を推測する方法
取得費を収入金額の5%相当額とする方法は昭和28年以降に取得した場合も適用できますが、バブル期以後の取得など明らかに5%相当額より、高い価格で取得していると推測されるケースもあります。
その様な場合には合理的な計算方法で取得費を計算する方法も認められています。
建物については、例えば「標準的な建築価額表」を基に計算します。
建築年、建物の構造及び床面積から標準的な建築価額を算出し、取得費を推測することができます。
土地については、例えば一般財団法人日本不動産研究所が公表している「市街地価格指数」を参考にして、譲渡した金額から取得費を推測することができます。他にも路線価、公示価格、基準地価格、固定資産税評価額などの変動率から取得費を推測する事もできます。
平成12年11月16日の国税不服審判所における裁決では、土地建物を一括譲渡して、取得費が不明であったため、築 4 年の建物について着工建築物構造単価から建物の取得費を割り出し、これを譲渡対価の総額から控除して土地の譲渡価額を求め、取得時の六大都市を除く市街地価格指数(住宅地)の割合を乗じて土地の取得費を算定する方法を合理的としています。
既に概算取得費で申告済の場合
当初申告で概算取得費で申告してる場合、更正の請求※を行う事により税金が還付される可能性があります。申告後に更正の請求を行う場合には、証明資料についてできる限りの資料を収集し、納税者側が更正の請求の内容について立証していく必要があります。
更正の請求の場合は立証責任は納税者側にあるため、更正の請求の請求を行う場合にはハードルは上がります。
国税不服審判所による裁決事例では更正の請求で変動率による取得費の推測は認められていません。
平成 26 年 3 月 4 日の国税不服審判所の裁決では、六大都市には含まれていない所在地の土地の取得費について、六大都市市街地価格指数を用いて納税者が畑の取得費を再計算し更正の請求をした事案では、国税審判所は「所在地や地目の異なる六大都市市街地価格指数を用いた割合が、問題の土地の地価の推移を適切に反映した割合であるということはできない」として、納税者の再計算を認めませんでした。
※更正の請求
更正の請求とは、納める税金が多すぎた場合や還付される税金が少なすぎた場合に、これらの金額を正しい額に訂正するために提出する請求する手続きです。
取得費が不明な場合の申告についてもご相談ください
取得費が不明な場合の譲渡所得の申告について、概算取得費5%で申告することで多額の税負担が発生してしまう可能性があります。譲渡所得の税金は取得費の差で大きく変わります。
推測により申告する場合は市街地価格指数以外にも、路線価、公示価格、借入がある場合には抵当権の設定の確認、購入代金の振り込み資料等でできるだけ当時の相場に近い金額を算出する事で適切な税負担にする事ができます。
概算取得費を用いない方法で申告を検討される場合、お電話もしくはお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。