夫婦の間で居住用財産を贈与したときの配偶者控除

2023/2/18

2023/02/18

概要

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。この規定の適用を受ける場合には贈与税の申告が必要になります。
また、生前贈与があって、3年以内に相続があった場合には、贈与された財産は相続税財産に加算され相続税の対象になりますが、この規定の適用を受けた贈与された財産は相続財産に加算されません。

要件

  1. 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと。
  2. 配偶者から贈与された財産が、 居住用不動産であることまたは居住用不動産を取得するための金銭であること。
  3. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること。

必要書類

  1. 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本または抄本
  2. 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し
  3. 居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証するもの
  4. 固定資産評価証明書

注意点

贈与せずに相続する場合と比較したときに必ずしも有利になりません。

①相続税の基礎控除額

相続税の基礎控除額は以下の算式により計算されます。法定相続人がいる場合3,600万円以上になります。相続した財産が基礎控除額以下であれば相続税の課税はされません。

相続税の基礎控除額=3,000万円+(法定相続人の数)×600万円

②配偶者の税額軽減

配偶者の税額の軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、1億6千万または配偶者の法定相続分相当額の次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。被相続人が配偶者しかいない場合には法定相続分が100%ですので、相続税は一切かかりません。

③小規模宅地等の特例

相続する場合自宅の土地の価格は「小規模宅地等の特例」により330㎡まで80%評価減が適用できます。この小規模宅地等の特例は、配偶者に自宅を贈与するときは使えません。

④不動産取得税、登録免許税

贈与の場合税負担が高くなります。

不動産取得税 登録免許税
生前贈与 宅地:固定資産税評価額の1.5% ※
建物:固定資産税評価額の3.0% ※
固定資産税評価額の2.0%
相続 非課税 固定資産税評価額の0.4%

※・本則税率は4%、2024年3月31日までに取得した土地、住宅用の家屋については3%。
・住宅用地の取得が2024年3月31日までに行われた場合には課税標準額が2分の1扱いとなる。
・「新築、増改築、又は中古住宅の取得」や「住宅用地の取得」の場合の軽減措置あり。

⑤特別受益の持戻し免除の意思表示の推定

特別受益とは一部の相続人が被相続人から生前贈与や遺贈、死因贈与で受け取った利益のことです。このような不公平を是正するために、相続法では、相続分の計算するうえで生前贈与や遺贈を特別受益とし、遺産にその特別受益の額を反映したうえで、各相続分を計算することができると規定されています。

持戻しを免除するためには、原則として被相続人の意思表示が必要になります。2019年7月1日から施行された改正相続法では長年連れ添った夫婦間で、居住用不動産の生前贈与等を行った配偶者相続人については、持戻し免除の意思表示があったものと推定され、配偶者相続人が保護されることになりました。

この記事の監修

亀川貴之

亀川税理士事務所
税理士亀川 貴之(かめかわ たかゆき)

平成25年税理士登録
税理士事務所勤務を経て、平成28年7月、亀川税理士事務所設立。
クラウド会計freeeに特化し、不動産オーナー、
中小企業の経営サポートを行っている。

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