遺言について
2023/3/9
2023/03/09
遺言とは
遺言は被相続人(故人)が自分の財産について法律の定めと異なる相続の配分を生前に希望するときに作成するものです。遺言は、民法所定の方式によらなければならず、口頭で行っても有効な遺言とはなりません。遺言を書面にしたものが遺言書になります。遺言書を作成すれば遺産を法定相続人以外の人にも渡す事や寄付をすることもできます。
遺言があれば原則としてその内容のとおりに遺産分割されますが、法定相続人には遺留分の権利があり、遺留分を侵害する場合には紛争になる可能性もあります。
法定相続分
死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。なお、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。また、内縁関係の人は、相続人に含まれません。第一順位は死亡した人の子、第二順位は死亡した人の直系尊属(父母、祖父母)、第三順位は死亡した人の兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡している場合はその人の子)になります。
民法では全ての相続人において公平な相続割合が法定相続分として定められています。遺言がない場合には基本的にこの法定相続分に基づいて法定相続が行われます。
相続準備 | 法定相続人と法定相続分 | |
---|---|---|
第1順位 | 配偶者:1/2 | 子:1/2 ※ |
第2順位 | 配偶者:2/3 | 親:1/3 ※ |
第3順位 | 配偶者:3/4 | 兄弟姉妹:1/4 ※ |
※人数で分けます
遺留分
遺留分とは、法定相続人のうち兄弟姉妹以外の相続人に保障された、相続財産の確保に関する最低限の権利をいいます。遺留分の割合は、父母等の直系尊属のみが相続人の場合は相続財産の3分の1、それ以外の場合は2分の1となります。
2019年7月1日以前の民法改正前は、遺留分について「遺留分減殺請求権」を行使する事により、財産の所有権や共有権が当然に遺留分権利者に帰属するとされていました。不動産や株式などの財産が共有状態になり、財産承継に支障をきたすことを回避するため、民法改正により「遺留分侵害額請求権」という金銭債権に改められました。「遺留分侵害額請求権」は遺留分権利者が、受遺者等に対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求する事ができる権利です。
遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年で時効により消滅します。また、相続の開始から10年が経過した場合であっても事項により消滅します。
相続人の態様 | 相続財産に対する各相続人の遺留分 |
---|---|
配偶者のみ | 1/2 |
配偶者と子(代襲相続を含む) | 【配偶者】1/4 【子】1/4 |
子のみ(代襲相続を含む) | 1/2 |
配偶者と父母(直系尊属のみ) | 【配偶者】1/3 【父母】1/6 |
父母(直系尊属のみ) | 1/3 |
遺言の種類
遺言には普通方式と特別方式があります。特別方式は特殊な状況下で利用される遺言の形式ですので、一般的には普通方式の遺言で作成されます。普通様式には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類の方法があります。
普通方式遺言の比較
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
---|---|---|---|
作成方法 | 遺言者が本文・氏名・日付を自筆で書き押印する ※2019年1月より財産目録についてはパソコンでの作成や通帳のコピーの添付でも可能となった |
遺言者が公証人に内容を伝え、公証人が公正証書を作成する | 遺言者が遺言を作成・押印・封印のうえ、公証人に遺言者が作成したものであることを確認してもらう |
作成場所 | 自由 | 原則として公証役場 | 作成した遺言を公証役場に持参 |
証人 | 不要 | 2名が作成時に立会 | 2名が作成時に立会 |
検認 | 必要 ※法務局保管の場合は不要 |
不要 | 必要 |
保管 | 自分で管理 ※2020年7月10日より法務局での自筆遺言書保管制度(手数料3,900円)が始まった。 |
公証役場で保管 | 自分で保管 |
費用 | 公証人手数料(数万円~十数万円)+証人手数料(1人6千円~7千円) | 公証人手数料(11,000円)+証人手数料(1人6千円~7千円) | |
メリット | ・費用がかからない ・遺言の内容を秘密にできる |
・形式などは事前にチェック済み ・偽造・変造を防げる ・保管の心配がない ・検認手続きが不要 |
・遺言の内容を秘密にできる ・偽造・変造を防げる |
デメリット | ・内容・形式の不備により無効となる恐れがある ・紛失の恐れがある ・検認手続きが必要 ・偽造・変造の恐れがある |
・作成に費用がかかる | ・内容と形式の不備により無効となる恐れがある ・紛失の恐れがある ・検認手続きが必要 |
遺言の作成にあたって
遺言の作成にあたって財産と債務のリストアップが必要になります。
- 不動産 固定資産税課税台帳、固定資産通知書
- 有価証券 取引明細書
- 預貯金 通帳
- 生命保険 保険証券、契約内容のお知らせ
- ゴルフ会員権 会員権証書
- 借入金 借入金返済予定表、金銭消費貸借契約書
- 過去の贈与 贈与税の契約書、贈与税の申告書
検認
検認とは相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
検認は遺言の保管者、遺言書を発見した相続人が遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に申立をして行います。
遺言の執行
遺言の執行は相続人全員で行うか、遺言執行者が行います。遺言執行者は、遺言者の財産の確認を行い、財産目録を作成、相続人の把握、そして遺言者の財産を管理しながら預貯金の解約や不動産・株式の名義変更などの手続きを行います。遺言書に遺言執行者の記載がない場合、相続人や利害関係人などの申し立てにより家庭裁判所で遺言執行者を選任することができます。
遺言執行者は法律上未成年者と破産者以外であれば就任する事が可能です。特に専門的な資格は求められていません。外部の専門家に遺言執行者を依頼する場合、一般的に、財産の1%~の金額が報酬として支払されることが多いようです。